見えているのに気づかない?半側空間無視とは
私たちの脳は、五感を通して得た情報を処理し、世界を認識しています。しかし、脳卒中などによって脳が損傷を受けると、その情報処理に異常が生じ、日常生活に支障をきたすことがあります。その症状の一つに、「半側空間無視」があります。半側空間無視は、視野の半分にある人や物に気づかなくなる、あるいは意識しなくなるという、驚くべき症状です。例えば、食事中にご飯を片側半分だけ残してしまったり、人と話す際に相手の顔の半分しか見なかったりします。
重要なのは、この症状は視力障害とは異なるということです。目は見えているにも関わらず、脳が視覚情報を正しく処理できないために起こります。そのため、周りの人からは理解されにくく、日常生活で様々な困難に直面することがあります。
この症状は、右脳の頭頂葉という部分が損傷を受けることで起こりやすいことが知られています。この部分は、空間認識や注意機能を司っており、損傷を受けると空間を認識したり、注意を向けたりすることが難しくなります。
半側空間無視は、リハビリテーションによって症状の改善が見込める場合もあります。日常生活の中で意識的に注意を向ける訓練や、損傷を受けた脳の機能を補う訓練などを通して、少しずつ症状を改善していくことが期待できます。